県交通政策課は、通勤手段を自家用車から公共交通機関へ転換する「マイカー移動からの転換等促進事業」の一環で、茅野市金沢の御狩野工業団地を、県内4カ所に置くモデル地域の一つに選び、地元の御狩野区企業連合や市と連携しながら、同団地の従業員を対象とした通勤バスの実証運行を7月まで行う。初日の28日朝には、27人乗りのシャトルバス1台で計6便を運行。後日実施するアンケートと合わせて、通勤実態や課題の把握に努める。
県はガソリン価格高騰対策や交通事故数の減少、健康増進などの観点から、公共交通機関の利用を促す事業を昨年度から推進している。同地域では6月24日~7月19日を「ノーマイカー通勤促進月間」に定め、期間中は、毎週金曜日の午前7時~8時と午後5~6時に、JR青柳駅前を出発して団地内の企業や公民館に停車する1周約20分のルートをシャトルバスが運行する。
同区企業連合長を務める高島産業の小口武男社長によると、青柳駅から工業団地へ向かうには、駅裏側の山を迂回する必要があり、徒歩では30分ほどかかるという。通学の時間帯には、電車で通学する学生を送迎する車が増えるが、工業団地と駅をつなぐ道の幅員は狭く、車両のすれ違いが難しいことから、混雑する日も多い。
こうした交通問題を解消し、二酸化炭素の排出を削減したい考えから、2019年に地域の7社で同連合を結成。市のゼロカーボン推進室などと協議を進めた。駅の裏に歩道橋を架ける構想もあったが、設備工事や維持にかかる費用が数十億円に上るとの試算を受け、「現実的ではない」との判断。電気や水素を動力源としたバスの運行を模索していた。
通勤バスに乗車した関谷孝さん(75)=諏訪市小和田=はミヤサカ工業に勤務。普段は朝の混雑を避けるため、午前6時50分ごろに自宅を出発しているといい、「10年ほど働いているが、電車で通勤したのは初めて」と話す。乗車中の取材に「運転しなくて済むのは快適だ」と評価する一方、「今回は電車とバスの接続がうまくいったが、遅延が起きた時が気になる」と懸念も口にした。
小口社長は脱炭素を進める「カーボンニュートラル」の取り組みの重要性を強調。「会社の駐車場を発着場として提供し、社員だけでなく、地域の学生たちも利用できる交通網を作りたい」と展望を語った。
県交通政策課は今後について「市町村単位での取り組みになる」との見解を示し、「各団体と状況共有しながら有効な初期投資の在り方について探り、要望があれば支援も検討する」とした。
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