2025年3月27日付

2025/03/27 08:00
八面観

本家より一足早く咲き始めたタカトオコヒガンザクラの花見を楽しんだ。東京都世田谷区にある「蘆花恒春園」。高遠の桜に魅せられた友人から教えてもらうまで、東京で見られるのは新宿御苑くらいだろうと思っていたので興味が湧いた▼文豪徳冨蘆花の名を冠し、旧宅もあるここにタカトオコヒガンザクラのもう一つの物語があった。始まりはこうだ。公園の拡張計画が持ち上がったのが1991年。桜の名所をつくろうと調べる中で白羽の矢が立った。ところが、当時の高遠町からは「門外不出」として断られた。それから4年後、都知事からの寄贈申請書をもって再交渉し、念願の苗木が高遠から入ることになったそうだ▼パンジーや菜の花が咲く丘にタカトオコヒガンザクラはあった。散策路沿いに12本。大きく広げた枝先に淡いピンク色の花がほころび始めていた。満開になれば見応えのある風景になる。信州人としてうれしく、誇らしい気持ちになった。大げさでなく、知る人ぞ知る名所▼本家の高遠城址公園(伊那市)は、城址に桜が植えられてから150年の節目を迎える。「天下第一の桜」となったのは地域で大切に守り育ててきたからこそ。桜への住民の愛情は蘆花恒春園でも強く感じた▼日本気象協会の予想だと、開花は4月3日。いつか、まだか-。待ち遠しいけれど必ず花は咲く。「待てない時代」にあって待つ楽しみも桜の魅力。

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