2024年12月12日付

2024/12/12 08:00
八面観

取材ノートに書き込んだ殴り書きの文字。大事なことを書き落とさないよう忙しくペンを動かす。居合わせた児童が興味深げにノートをのぞき込む。「何て書いてあるの」の問い掛けに「おじさんにしか読めない字」と答えてみたが、雑な文字を見られて恥ずかしい気持ちがした▼仕事柄、急いで字を書く必要がある。自分が理解できればいい。独自の省略や変形を施した字に慣れ過ぎたせいか、ずいぶん字が汚くなったと実感する。小学生の頃は書道教室にも通い、字には自信があった。今は香典や祝儀袋に名前を書くのも気が引ける▼児童生徒の絵画、書写作品を集めた総合展覧会。壁には小中学生の硬筆、毛筆作品がずらりと並ぶ。「とめ・はね・はらい」を意識して丁寧に書かれた文字は、うまい下手を問わず見る人に好感を抱かせる。活字では醸し出せない手書きならではの魅力だ▼12月12日は「いい字一字」の語呂合わせにちなんだ「漢字の日」。日本漢字能力検定協会は一年の世相を表す「今年の漢字」を募集し、応募数が最も多い一字を清水寺(京都)の貫主が和紙に揮毫して発表している▼今年の漢字は何だろう。思い浮かぶのは裏金問題の「裏」、闇バイトの「闇」など暗いものが多い。来年が希望に満ちた一年となるよう抱負を一字で書いてみるのもいい。ぞんざいに扱いがちな文字と真剣に向き合い、こん身の一筆。まずは年賀状から。

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