2024年10月10日付

2024/10/10 08:00
八面観

〈秋の日はつるべ落とし〉とはよく言ったものだ。夕方に車を走らせる川沿いの道。西日に透けるススキの群生がきらきらと黄金色に輝いたかと思えば、あっという間に日没を迎える。なるほど夜長を楽しむ季節である▼日が短くなるに連れてようやく秋らしい気候になってきた。天気がぐずついた昨日はぐっと冷え込んだ。ただ10月を通してみれば、この先も平均気温以上の予報がずらり。「寒い寒い」とこぼしつつ、長引いた残暑からの日々に感覚がまひしているのかもしれない▼そういえば落葉樹の色づきもずいぶん遅い。日本気象協会の「紅葉見ごろ予想」を見るとやはり平年より遅れているようだ。中央アルプス千畳敷カールでは乾燥が影響したのか、ナナカマドやダケカンバの多くが紅葉を前に落葉した-と小紙上伊那版が伝えていた▼木々の葉が赤や黄に染まる風景は世界中で愛される。「秋が続く限りその美しさを表現するための手もキャンバスも色も足りない」(ゴッホ)。「10月がある世界に生きていて本当によかった」(モンゴメリ)。芸術家や作家の創作意欲をくすぐる季節なのだろう▼創作センスのかけらもない凡夫の身としては、せめて高名な作品に触れることで芸術の秋を楽しみたい。久しぶりにモンゴメリの「アン・シリーズ」でも読み返してみようか。スマートフォンを触りながら寝落ちする夜更けばかりではもったいない。

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