遅々として進まない原稿。パソコンを前に固まることがしばしばある。まさに、今もそう。ひとまずキーボードをたたいてみるが、書いては消しての繰り返し。3歩進んで2歩下がるどころか、そのまま3歩戻っている▼どうにも行き詰まった時、息抜きに開く一冊がある。その名も「〆切本」(左右社)。締め切りが迫る中、筆を止めてしまった作家の日記や手紙をまとめたものだ。谷崎潤一郎に太宰治、夏目漱石、横光利一…。名高い文士の苦悩が赤裸々につづられていて面白い▼漱石は朝から晩まで費やして一枚も埋まらないことがあるとこぼし、谷崎は遅筆が原因で貧乏だと愚痴る。昭和初期に「文学の神様」と称された横光は脱稿をせかす編集者を公然と批判。「書けないときに書かすと云ふことはその執筆者を殺すことだ」と開き直る▼近代文学の礎を築いた物書きの生みの苦しみが伝わる。原稿用紙をくしゃくしゃに丸める姿も目に浮かぶ。もちろん、地域紙の一記者が語るのもおこがましいのは百も承知。彼らはあふれる文才ゆえに思い悩み、こちらは時間に追われるまま乱文、駄文を繰り返す▼もっとも、文豪のお歴々だって早く書き上げたかったのが本音だろう。太宰は「遅筆は作家の恥辱である」と、原稿が進まない自分を厳しく戒めた。ニュースを扱う新聞記者ならばなおのこと。これ以上、パソコンの前でうなっている場合ではない。
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