下伊那郡阿智村にある、満蒙開拓平和記念館を何度か訪れている。開拓団に参加し、戦後帰国した祖父母の足跡をたどりたい思いからだ。あまりに凄惨だったのだろう。祖父母は生前、当時の様子をほとんど話してくれなかった▼79年ぶりの景色は、その目にどう映ったのか。戦時下の旧満州で細菌兵器の実験などに関わったとされる日本の関東軍防疫給水部(731部隊)に所属していた元少年隊員、清水英男さん(94)=宮田村=が先月、中国黒竜江省ハルビン市郊外にある部隊跡地を訪れた▼清水さんは1945年3月入隊。勤務内容を知らされず病原菌について学んだ。体をばらばらにされた親子のホルマリン漬けなどが並ぶ標本室も目にした。固く口止めされ、戦後は家族にも部隊のことは話さなかった。しかし「戦争だけは二度と起こしてはいけない」との思いから、2016年から各地で証言を重ねている▼戦後初めて訪れた施設跡地。実験室や監獄棟、ボイラー棟などが残る。標本室で受けた衝撃は消えない。「犠牲者は許してくれるわけがない」と思いながら、謝罪の念とともに慰霊碑に手を合わせた▼帰国後、戦争について「どうして仲良くできないのか。そればかり考えている」と言葉を詰まらせた清水さん。戦争は当時14歳の少年を、こんなにも苦しめ続ける。平和の尊さを知る戦争体験者の貴重な声を大切に、後世へと引き継ぎたい。
購読残数: / 本
⻑野⽇報社からのお知らせ
フォトサービス
紙⾯に掲載された写真を有償で提供しています
諏訪湖マラソン…外部リンク
毎年10⽉開催の諏訪湖⼀周のハーフマラソン
第36回諏訪湖マラソン記録
⻑野⽇報の紙⾯PDFをご覧いただけます
⻑野⽇報ご購読
こちらから⻑野⽇報のご購読を申し込めます
⻑野⽇報就職研究会…外部リンク
「就職はふるさとへ」と考えている学⽣のみなさんへ
長野日報社 社員募集
2025年4月入社の社員を募集します
週間ランキング
「ララオカヤ」26年度から解体見通し 岡谷 上伊那ご当地ナンバー導入へ 広域連合方針 諏訪湖SA上下線に「諏訪の国」コーナー新設 岡谷でシルクサミット開幕 技術継承、文化創造へ 谷川俊太郎さん 下諏訪の親友黒田さんと交流 強い冷え込み、雪づくり 霧氷の樹林を背に 春近五人衆と井月、地元から光当てる 研究会発足 輝く青い諏訪湖 蚕糸公園イルミ点灯 おむすびコンテスト 最優秀に矢坂さん 築150年の民家に耐震シェルター 岡谷の小口さん宅日付で探す