相模原市で新聞記者をしていた当時、編集長が指摘していたのが「相模原には”へそ”がない」だった。市域の北に自然豊かな津久井エリアの玄関口「橋本」、真ん中に市庁舎などが並ぶ「相模原」、南に小田原行きと江の島行きの乗り換え起点「相模大野」。駅を中心に3拠点に公共施設を分散投資したため、1点集中の隣接都市、東京都町田市や八王子市に比べ、人口は多いのに埋没感がある▼北、中、南を見渡した戦略的なまちづくりをすれば、ある程度の規模の施設を3拠点に同じように造らずとも、1点集中で全市域や市外からも人を呼び込める質の高い施設ができるといった主張だ▼そんな昔のことを思い出したのは、公共施設の広域的管理の提案を耳にする機会が増えたから。茅野市では国際スケートセンターの存廃が議論される中、競技会やレジャーで市外からも利用者が多い同施設の運営を諏訪地域全体で支えてはどうかと▼いまひとつ現実味を帯びないのは「それならこっちも広域で」という逆提案を懸念してのことらしい。設置に関わっていないのに運営がきついから頼るというのは気が引けるとも▼だが、社会が変化し、全ての公共施設の維持が困難な時代を迎えた今、市域を超えた圏域全体の戦略の必要性が高まっている。相模原の3拠点とどこか似たへそがない諏訪地域。だからこその難しさを乗り越えてほしい。逆境は好機でもある。
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