2024年8月26日付

2024/08/26 08:00
八面観

岡谷市山手町に「魔王社」という恐ろしげな名前の神社がある。地図で知って興味を引かれ、現地を訪れてみたところ、由緒書きに八十禍津日神・他化自在天(魔王大六天)を祭る神社で、「魔王大六天は除災、招福の神仏、特に火伏の神」「魔王様の名で親しまれている」という▼魔王などというのは、むしろ遠ざけるべき存在に思えるが、由緒書きを読んでみれば崇徳天皇や菅原道真、平将門など恐ろしい力を持つ怨霊を神様として祭っている例が幾つか思い当たる▼怨霊が国や地域にたたらないよう、その力を鎮めるために祭り始めたものが、やがて、その強い力を借りて災厄から守ってもらったり、さらには繁栄を願ったりする対象に変化していった。崇徳天皇は良縁、菅原道真は学業成就、平将門は戦勝などのご利益があるとされている▼恨みを残して死んだ当人からすれば複雑な心境だろうが、現代以上に人間の力では対処のしようがなかった天災や疫病などに見舞われていたら、怨霊でも魔王でもいいから力を貸してほしいと願った切実な気持ちも分かるような気がする-と24日夜の激しい雨の音を聞きながら思った▼ちなみに岡谷市内には「魔王天白飯綱神社」という、これまた大変に強力そうな名前の神社が湊地区にある。実際に訪れてみるときちんと手入れされた、地元で大切にされていることが伺える、かわいらしいほこらが建っている。

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