2024年8月22日付

2024/08/22 08:00
八面観

鎌倉時代の歌人、藤原定家が古来の秀歌を選集した小倉百人一首。恋愛の歌が圧倒的に多い一方で、四季では秋が目立つ。夏はごく少数。悲哀を感じさせる季節にこそ、情緒豊かで心を打つ歌が浮かびやすいのだろうか▼暑い日が続くが、暦の上ではすでに秋。二十四節気を見れば7日に立秋を迎え、きょうは処暑だ。「処」には落ち着かせるという意味があるので、これから次第に暑さが収まってくる…はずである。確かに昨日の朝方は寝苦しさがなく、うっすら肌寒さすら覚えた▼とはいえ、日中はなかなか季節の変化を感じられない。冷房の利いた社内から一歩出れば、むわっとした外気にさらされる。車のドアを開けた途端、さらなる熱気がまとわりつく。アイドリングせずに乗り込み、ものの数十秒で汗だくになりながら取材先へと急ぐ▼気象庁によると、昨夏は6~8月の3カ月間の平均気温が各所で観測史上最高を記録した。今夏もその暑さに匹敵するという。「異常」で「記録的」な猛暑も、2年続けば今後の「標準」になり得るだろう。そういえば昨年は「地球沸騰化」という言葉も耳にした▼この時期に気温を下げる代表格といえば夕立か。通り雨が過ぎた後はひんやりと気持ちいい。百人一首の中では寂蓮法師が〈村雨の露もまだひぬ真木の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ〉と詠む。天恵の”お湿り”を繰り返すうちに季節も移ろっていく。

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