2024年8月9日付

2024/08/09 08:00
八面観

競い合う者同士が人事を尽くしても決着がつかない時、古今東西、くじ引きが行われる。3日のパリ五輪柔道の混合団体決勝は柔道強国の日仏が死力を尽くした結果3勝3敗となって、抽選による代表戦へ。ここで、代表選の階級を決めるためにデジタルのルーレットが使われた▼会場の巨大なスクリーンに表示されたのはカジノのスロット機のように回る階級の数字。一度、反動を付けるように上に少しだけ動いてから高速で回転し、やがて速度が落ちて、「+90kg」で止まり、数字がどんと拡大された▼実際の抽選はコンピューターのプログラムが乱数を発生させて無機質に決めているのだから一連の動きは人間が付けた演出だ。厳粛な場面での抽選としては、どうもテレビのバラエティー番組でも見ているようで違和感があった▼世界最強の呼び声も高いテディ・リネール選手に必死に立ち向かう斉藤立選手が投げられてしまう-という残念な結果も手伝っての感覚かもしれない。が、人には見えないブラックボックスの中で抽選が行われているのも違和感の理由だろうと思う▼人間の意思が介在しないコンピューターだからこそ厳正な抽選が行われるという理屈は分かるが、誰の目にも分かりやすい公正さも欲しい。太陽から聖火を採火して始まるような伝統的な様式も大切にしている大会なのだから、抽選方式にももう少し情緒があってもいいのでは。

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