太陽はいつの間にか高く上がり、強い日差しがジリジリと照り付ける。辺りに響くセミの声。楽しい夏休みを思わせる夏の朝の一こまだ。一方で、こうした情景に重い記憶が呼び起こされる人たちもいる▼79年前のこの時期。太平洋戦争は各地の前線から苦戦の報が届くなど敗戦色が濃くなり、日本の政府や軍部は重大な決断を迫られていた。そんな局面でも、一般家庭には苦労はありながらも、日々の暮らしがあり、笑顔があった▼8月6日午前8時15分、原爆投下。広島市で散髪店を営んでいた鈴木六郎さん一家6人は、子ども4人が自宅や親戚宅などで相次いで死去。六郎さんも救護所で命を落とす。家族を全て失った妻は井戸に身を投げた。笑顔にあふれた家庭の幸せが、一瞬でなくなった▼2019年に出版された「ヒロシマ 消えたかぞく」(ポプラ社)。六郎さんが残した家族の日常を収めた写真が、戦争の不条理を訴える。六郎さんのおい鈴木恒昭さんはテレビ局の取材に「これは実際にあったこと。フェイクでも何でもない」と訴えた▼諏訪や上伊那に暮らす人たちはどう暮らし、何を感じていたのか。「伝えたい~戦後79年 過去から未来へ」を企画して体験談を募ったところ、貴重な文章を多数寄せていただいた。近く紙面で紹介したい。同じ地に暮らす人だから伝わる”生”の声が、息遣いがきっと、思いを次の世代につなげてくれる。
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