「きれいな色だね」「娘や孫がびっくりするかな」。施されたネイルを見たお年寄りの言葉。笑顔があふれ、その場の雰囲気が瞬く間に和んだ▼取材で訪れたデイサービスセンターでの一こま。老人施設などの介護現場でネイルやメーク、エステなど美容の施術を取り入れる動きが広がりをみせている。見た目がきれいになるだけでなく、前向きな気持ちになれる、自信がつくなど、心身の両面でプラスの効果が得られるのだという▼その施設では、ネイル未経験の利用者が大半だった。優しく積極的に語り掛けてコミュニケーションを取る施術者。黄や緑、青など鮮やかに彩られた爪を眺めて表情を緩める利用者。心も体も若返ったかのよう。はたから見ても心が躍り、穏やかな気持ちになった▼労働人口の減少と高齢化に伴い、拡大する介護需要。2019年度の介護職員数は約211万人となる中、都道府県が推計した介護職員の必要数は25年度に約243万人、40年度には約280万人と見込む。介護人材の不足は目下の課題。現場の処遇改善は進んでいると言えるのだろうか▼相手の目線に立って向き合い、心や体のきめ細やかなケアが求められる職業。介護職を「究極の接客業」と言う人もいる。「美容は人を元気にする。介護現場の力になりたい」と前出の施術者。超高齢化社会を迎えている日本。利用者と職員、双方への「彩り」が必要だろう。
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