お祝いメッセージが続々と届き、ろうそくを立ててケーキを食べた―。ウクライナ北東部ハルキウに当時住んでいた少女イエバ・スカリエツカさんの12歳の誕生日は幸せに満ちていた。そのわずか10日後、ロシアの侵攻が始まった。通りに響き渡る爆発音。「手はふるえ、歯はガチガチ鳴る。恐怖におしつぶされそう」(「ある日、戦争が始まった」、小学館)▼日常から突然、地獄に突き落とされるのが戦争。1日も早い終結の願いを小欄に記してから2年以上が過ぎたが、侵略に終わりは見えない。ロシア軍は再びハルキウ州に侵入、攻勢を強める▼イエバさんは国外に脱出し、避難先で新たな生活を始める。侵攻から28日目「戦争ってどういうものなのか、知っている人は少なければ少ないほどいいんだ。(中略)知らないほうが世界はもっと幸せになるはず」と日記に記す。強い言葉が胸を突く。世界では戦争を知る人がどんどん増えている▼茅野市中央公民館でポーランドに避難したウクライナの子どもたちの絵画展が10日まで行われている。作品をじっと見つめる。静かな空を求め、穏やかな故郷を願い、いつになっても平和が戻らないと嘆く。声なき声が耳を介さず心に届く▼イエバさんの日記は「わたしたちはまだ子どもだ。だから、平和で幸せな人生を送るのは、当然のことなんだよ!」と締めくくる。大人たちに大きな課題を突き付けている。
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