店頭に並ぶキャベツの値札を二度見してしまった。自分が認識している相場より2~3倍ほど高い。ブロッコリーもだ。一時的な品不足といわれるが、春先の天候不順による生育不良のためらしい▼オレンジジュース不足もニュースになった。こちらは6割を依存する、輸入元ブラジルの天候不順による不作が原因という。入手を巡る国際的な競争から日本が退けられつつある事情もあるようだ▼国内は人口が減少しているが、世界では人口増や新興国の経済発展などで食料の需要は拡大している。当然競争原理が働いて取引価格は上がるが、円安の影響もあり、日本が買い負ける状況が生まれているとされる▼身の回りに目を向けると、耕作されずに荒れてしまった田畑や果樹園が年々増え続けていることを実感する。農林水産省によると、全国の耕作放棄地は約42万ヘクタール。全耕地面積の1割に迫る。耕地面積はピークだった1961年の608万ヘクタールから3割、180万ヘクタール余りも減った▼農業従事者の減少や高齢化などが要因に挙げられて久しいが、そろそろ国内の食料安全保障を本気で考えるべきではないか。オレンジだけでなく、ウクライナ危機に伴う農産物の価格高騰や円安による買い負けなど、輸入頼みの危うさは深刻さを増している。気候変動への対策も急務だ。「農は国の大本なり」―。キャベツの値札から、先人の言葉がじわりと響いた気がした。
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