2025年3月28日付

2025/03/28 08:00
八面観

学生時代によくレコードを聴いた。もうCDの時代だったけれど、喧騒から離れてワンルームの部屋に戻り、心身を落ち着かせるにはアナログの音がぴったりだった。下北沢で自分が生まれる前にはやったトワ・エ・モワのレコードを収集した。ジャケットもすてきだった▼3月は古里で多くの音楽を聴いた。卒業式が行われた体育館で、休園する保育園で、明治時代に建てられた古民家で。青春を過ごした学びやを巣立つ中学生、思い出詰まった園舎に別れを告げる園児の歌声に目頭が熱くなった▼大規模改修を控えた諏訪市文化センターには中高の音楽系部活動が集まった。約800の客席があるホールではなく、その入り口にあるホワイエが舞台。せり出した壁面が反響板の役割を果たしてか、若さあふれる歌声や音色が上方からも降り注いでくる▼演奏ではさほど使われてこなかった空間だが、出演者からも来場者からも「響きがいい」「(互いの)距離感がいい」との感想が聞かれた。改修後のイメージ図には空間にピアノやソファが置かれ、居心地良さそうに利用する多世代の姿が描かれている▼アナログもデジタルの音も生演奏には及ばない。大阪の商業施設を舞台とした誰もが気軽に弾けるはずのストリートピアノを巡る騒動で「苦音」なる言葉を初めて耳にしたが、その言葉が存在するのであれば運営者が発したその一言こそ苦音と言いたい。

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