2025年3月25日付

2025/03/25 07:59
八面観

先日、こんなニュースに目が止まった。「富士山、静岡側からも入山料。山梨側と足並みそろえる」。静岡県議会が17日、富士山の登山客から1人4000円を徴収する条例案を可決した。今夏のシーズンから運用する▼すでに昨夏から条例で2000円の通行料を義務化している山梨県でも、4000円への引き上げが決まっている。失礼ながら両県といえば「富士山はこちらのもの」などといがみ合っているイメージがあり、「足並みそろえる」の見出しが意外でくすりと笑えた▼富士山論争で思いだすのは1988年のNHK大河ドラマ「武田信玄」。相模の北条氏康と駿河の今川義元、甲斐の武田晴信(信玄)による三国同盟のシーンだ。「甲斐の裏富士」と発言した義元に、晴信は「甲斐では誰一人裏富士などと申しませぬ」と反論する▼そればかりか晴信は、富士は本来裾野を隠してそびえるもので海側からの眺めは「尻丸出し」と暴言を吐く。これには氏康も義元も大笑い。史実ではなく脚色だろうが、そんなやり取りがあったのなら楽しい。大河の原作は上諏訪出身で富士山に傾倒した新田次郎▼諏訪市の長野日報本社からは富士山が望める。このところは春がすみで輪郭がぼやけるものの、こぢんまりした姿にも威厳を感じる。新田も愛した眺望だろうか。富士山に裏も表も、近いも遠いもない。そのたたずまいは、どこから眺めても美しい。

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