2025年2月6日付

2025/02/06 08:00
八面観

八剱神社(諏訪市)による御神渡り(御渡り)の観察で富士見町の自然写真家西村豊さんに会い、茅野市で開かれていた西村さんの写真展に足を運んだ。豪雪地帯に美しい色が映える越後上布、富士山頂に並ぶ山小屋の布団。「干す」を題材にした写真が飾られていた▼フナの「すずめ焼き」の写真があった。諏訪湖や河川で捕った小ブナを2匹ずつ串に刺し、庭先に並べてこしらえる。天日に干すと生臭さが消える。「焼き」という名で出荷され、地元川魚店が味付けして店頭に出した▼10年ほど前まですずめ焼き用のフナを出荷していた漁師がいた。私も寒ブナの時期に何度か取材させていただいた。いまは作っていない。フナが捕れなくなったことが一因である▼氷上漁業に続いて、ワカサギ採卵のやな場も、複数の漁師がわずかな時間差で投網を打つ早春の追い打ち漁も見掛けなくなった。御神渡りの定点観測地点としている舟渡川はかつて「大四ツ手銀座」と呼ばれ、遡上するコイやフナなどを狙う仕掛けが林立したが、春を迎えても巨大な風呂敷のような網は現われない▼冬季結氷しない湖に魚食性の鳥がやってくる。夏秋期の高温や湖内の環境変化も生き物を暮らしにくくしているに違いない。伝統漁法や風物詩にとどまらず、湖周辺から漁師自体がいなくなるのではと心配になる。なかなか凍らない諏訪湖。この冬も私たちに何かを問い掛ける。

続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。

日付で探す

<前次>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728