室町時代に能を大成させた世阿弥は多くの書を残した。その一つ「風姿花伝」の中にこうある。〈いづれの花か散らで残るべき。散るゆえによりて咲く頃あればめづらしきなり。能も住する所なきをまづ花と知るべし〉▼散らずに残る花などない。散るからこそ、また咲けば美しい。能も花と同じように停滞せず変化していくことが大切だ-と。室町以前の平安・鎌倉時代、散りゆく花の姿は盛者必衰に通ずる「はかなさ」の象徴だった。世阿弥はその「無常」を前向きに捉えたのだ▼新年度が始まった。進学や進級、入社、転職、異動…。新たな環境に身を置く人も多いだろう。自身が動かなくても、上司や部下が変われば仕事も変わる。新天地が前途洋々ならば何も言うまい。しかし、望まぬ変化に明るい未来を見通せない人もいるに違いない▼ある転職サイトによると、20代の約8割が「昇進したくない」そうだ。出世欲のない若者は変化よりも現状維持を好む。仕事や人間関係を一から構築するのは不安で苦痛だ。ただ、長い人生には必ず転換期がある。その時花は散るかもしれないが、きっとまた咲く▼ところで、身の回りに変化がないという方にも世阿弥はぴったりな言葉を残している。〈初心忘るべからず〉。壮年や中年の「時々」も、達観したはずの「老後」も。世阿弥によれば、人は皆いつでも未熟な初心者だとか。手厳しいが肝に銘じたい。
購読残数: / 本
⻑野⽇報社からのお知らせ
フォトサービス
紙⾯に掲載された写真を有償で提供しています
第50回信州書道展 紙面PDF
長野日報の紙面PDFをご覧いただけます
諏訪湖マラソン…外部リンク
毎年10⽉開催の諏訪湖⼀周のハーフマラソン
第36回諏訪湖マラソン記録
⻑野⽇報の紙⾯PDFをご覧いただけます
⻑野⽇報ご購読
こちらから⻑野⽇報のご購読を申し込めます
⻑野⽇報就職研究会…外部リンク
「就職はふるさとへ」と考えている学⽣のみなさんへ
長野日報社 社員募集
2026年4月入社の社員を募集します
週間ランキング
エーコープ飯島店閉店へ 町が議会全協に報告 奥田瑛二さんら出演映画 諏訪地方で撮影進む 伊那インター工場を新築へ 日本ピスコ 伊那の名店「らーめん屋 原点」 5月6日閉店 映画「鹿の国」ロケ地 茅野の穴倉ツアー人気 圧巻「天下第一の桜」 高遠城址公園 高遠桜ヘリコプター遊覧復活 4月5~13日運航 にぎわう高遠城址公園 満開後初の週末 今年の世相「上の中」 こぶしの花占い 横河川堤防の桜、開花宣言日付で探す