2024年12月15日付

2024/12/15 08:00
八面観

酒が飲めたらどんなにいいのにと思うことが、たまにある。少量でも飲むと顔は真っ赤、心臓ばくばく。経験のない、いい気分になるであろうはるか前に体がSOSを発するのだ。つまり脳は酔っぱらうことができないのである▼飲めたらいいなと思うことは普段はないけれど、宴席ではいつも感じる。もともと大人数の中で話をするのが得意ではないから、にぎやかに会話が弾む中にあってどうしても手持ち無沙汰になってしまう。酔えばその雰囲気に溶け込めるのに▼長野県は全国有数の酒所。諏訪地方や上伊那地方にも多くの酒蔵が根差し、酒造りの伝統を守っている。たびたび取材させていただくのだが、そんな折も飲めない自分がもどかしく、味も分からないくせに話をお聞きしたり、記事を書いたりするのが何だか申し訳ないとも思ってしまう▼商品の顔とも言えるラベルを見るのは楽しい。これぞ日本の酒と感じさせる意匠からデザイン性の高いものまで本当に多彩。諏訪市の蔵の一つは、同市出身の画家原田泰治さんの作品をラベルにした酒を発売した。田園風景や清らかな水を残していきたいとの思いも込めたという▼日本酒などの「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録された。酒と付き合う機会が増える時期でもある。酒造りの技が醸す逸品の数々を味わうことで、文化遺産に手近に触れることができるのはうらやましい限り。

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