2024年12月6日付

2024/12/06 08:00
八面観

時代劇ではおなじみの台詞「殿のご乱心」。権力者がその権力を乱用して正気とは思えない命令を下した際に登場人物が語る。冬の時代劇の代名詞といっていい「忠臣蔵」でも有名▼海を隔てたお隣韓国では現代版「殿のご乱心」か。尹錫悦大統領が3日夜に突如、非常戒厳を宣言した。国会で解除決議がなされ、約6時間で終わったものの韓国政治はいまだその尾を引いて混乱に陥っている。国会に提出された大統領の弾劾訴追案はあすにも採決される見通しだ▼韓国では今年4月、革新系の最大野党「共に民主党」が単独過半数を獲得し、尹大統領は難しい国会対応が続いていた。対応に苦慮しての宣言との見方だが、国会の活動を止め、報道を統制する前時代的な判断は正気の沙汰とは言えず、代償は大きい。大統領が罷免され、その職を追われる可能性もあり、仮に訴追案が否決されて続投が決まっても政権基盤はさらにぐらつく▼少数与党による政権運営で政治に緊張感を。一強多弱の政治に危うさを感じた日本国民が10月の衆院選で示した選択だ。だが、それは野党がいたずらに政策を遅らせることを望んでいるわけではない。与野党ともに節度ある政治を望んでいる▼政治体制が異なるとはいえ、少数与党の政治の先にあったものが一時非常戒厳だったとすれば、最悪手と言うほかない。日本の与野党ともに見習うべき反面教師と言えよう。

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