今年も「現代の名工」の受賞者が発表された。工業や建築、調理など多岐にわたり、受賞者は全国で138人に上る。いずれもそれぞれの分野で心血を注いで卓越した技能を身に付け、他の模範となる日本社会を支える貴重な人材だ▼「職人気質」と言う言葉がある。「気質」は「きしつ」と読まれる場合と「かたぎ」と言う場合があり、違いはないように思えるが、一般的には「きしつ」は個人を特徴付ける性格、「かたぎ」はある職業や身分などを共有する人々に見られる共通の性格だとされる▼「職人気質」は一般的に腕が良く仕事の質は高いが、表面的には頑固で意固地に見える人物という意味で使われがちだが、自分の技能への強い誇りと自信に基づき、納得いく仕事をするため精魂を傾けるいちずな性質を持つ人だと思う▼戦後復興を遂げ、高度経済成長を経て経済大国へと成長してきた日本は、職人気質を持った人々に支えられてきたのであろうが、近年は科学の発達による機械化が進み、その職人たちが減っている▼過去に存在し、現代では再現不可能な技術を「ロストテクノロジー」と言う。古代インドで開発されというたダマスカス鋼、安土桃山時代末期までに作られた日本刀「古刀」もその一つ。これらの技術は当時の職人によって生み出された。日本には世界に誇れる技術があり、この技術を後世に残す職人が失われるのは日本の損失だ。
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