書店をのぞいたら来年のカレンダーが並んでいた。今年も残すは2カ月余り。月日の流れの早さを感じつつ、あの人の顔が思い浮かんだ。南木曽町の藤原宗三さん(84)。毎年11月23日に妻籠宿で行われる恒例行事「文化文政風俗絵巻之行列」で配られる瓦版の作者だ▼晩秋の木曽路を彩る行列は、木曽馬に乗った花嫁を中心に住民らが武士や飛脚、虚無僧などに扮して宿場を練り歩く。瓦版は、その年の主な出来事が風刺も込めて書かれ、ファンも多い。行列が中止となったコロナ下でも発行し、今年で57回目▼藤原さんにお電話すると、いつものように締め切り間際の大ニュースの扱いに悩んだそうだ。衆院選や米国大統領選は、「結果を入れなきゃ意味がない」とやむなく見送ったものの、振り返ると元日の能登半島地震をはじめ暗い話題ばかり▼印刷会社に原稿を渡す直前に飛び込んできたのが、ドジャースの大谷翔平選手の54本塁打と日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞。そこで、二つの明るい話題を書き足して締めくくったという▼「後継者が見つからない」とぼやきながらも執筆意欲は衰えない。与党過半数割れとなった衆院選。大接戦が予想される米国大統領選。世界の行方はどうなるのだろうか。明るい話題ばかりで、どれを選べばいいのか迷う―。藤原さんから、そんな悩みを聞けるような世の中になってほしいと切に願う。
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