毎週日曜日に4分進める。ここ1年のルーチンワークになっていた。購入から7年経過した機械式腕時計。徐々に誤差が大きくなり、いつしか一定の遅れを見越して腕に巻くようになっていた▼日常動作によって自動的にぜんまいを巻き上げる構造。経済的と思いきや、存外管理に手間やお金が掛かる。部品の摩耗や潤滑油の劣化に伴う誤差の発生は避けられない。一般的には3~5年に一度、本体を分解して点検や整備を行うオーバーホールが推奨されている▼少しぐらい遅れていても。そんな思いで放置していた時計の誤差は1日20秒、30秒と少しずつ拡大。とうとう日付表示の機能まで故障し、ようやくオーバーホールを決意した。専門店に預けて約1カ月。職人の手により分解、点検、修理された時計は本来の性能を取り戻した▼不便だとは感じていた。それでも長く使い続けるうちに致命的欠陥を問題視しなくなっていたようだ。よみがえった時計を手に、改めて「異常」を「当たり前」のように受け入れてきた自分自身の感覚のずれに気付かされた▼社会に目を向ければ、物価の高騰や経済格差の拡大、少子高齢化など「異常」と捉えるべき課題が山積している。いずれも国の将来を左右する重要な問題のはずだが、「当たり前」になってはいないだろうか。27日は衆議院選挙の投票日。社会の異常を点検、修正するオーバーホールの機会としたい。
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