コロナ禍をきっかけに、やりたくないことを断われるようになったとの声を聞く。行事から人付き合いまで、これまで慣例を重んじる場の中で言えずにきた個々の考えを出せる環境が生まれたという▼ビジネスの現場では営業や会議にインターネットを使う遠隔対談がすっかり定着した。現地まで足を運ぶ時間も労も減り「すごく楽になった」と喜ぶ。人が交わるあらゆる活動が制限され、不自由が続いた3年余の期間は、従前へのこだわりを排する機ともなった▼個人から社会までそこかしこで、その活動は必要か、やり方は適切かと既存のことを顧みて意義を確かめ、改善につなげられた-ともいえる。だが、冒頭の声は良い話ばかりではなく「面倒だ、大変だと反対が強くて活動や行事が成り立たない」との嘆きも漏れる▼4年の空白を経ての再開は、もはや新生。今春、氏神様の例祭を催した諏訪市有賀の小泉富彦さんは「まさかたった4年の休止でこうも廃れるとは」と復活の大変さを語ってくれた。幕の掲げ方一つも手順を忘れて、先人の姿を思い返しつつの大仕事だったそうだ▼「絶やすのは簡単だが、伝統は二度と取り戻せない」とも痛感したという。祭りで威勢良く長持ちを披露した小学生の小泉銀太朗さんは、「有賀に生まれたからこそできるお祭りが誇らしい」と言った。催事にぎわう今秋。それぞれに開催や継承への熱い思いがある。
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