2024年9月29日付

2024/09/29 08:00
八面観

全方位の眺望と豊かな植生がある入笠山をはじめ、八ケ岳連峰や南アルプスが間近に迫る富士見町の本社富士見支局に赴任して数カ月。「この機会に近くの山へ登ってやろう」と登山を再開した▼過去の噴火でできた八ケ岳は複数の山で構成される。「八ケ岳の魅力は、登った山ごとに大きく異なる美しい景色ですね」。先日、主峰赤岳の頂で会った神奈川の男性(39)は、そう語った。例えば、阿弥陀岳や権現岳から見る主峰の存在感には圧倒されるし、赤岳北の尾根から望む阿弥陀岳、中岳、赤岳3山の波打つような景色は印象的だ▼老子の研究者で、晩年を伊那谷で過ごした文学者の加島祥造さんは生前、「下界から山を見るのと同じように山から谷を見ても、また美しい。谷の美しさに気付きたい」と言った。確かに山々から眺める景色は谷の存在が美的な要素を際立たせる。一瞬でも、その景色を見られたら疲れが飛ぶ▼今夏出会った登山者の多くが県外者だった。青森の男性(60代)は赤岳登頂を成功させて「念願がかなった」と笑い、7月に気温39度を記録した前橋市の男性(50代)は26度の編笠山で「ここは天国」と喜んだ▼一方、県内の山では7~8月、過去10年で最多の計125人が遭難し、15人が亡くなった。それぞれの思いを秘めて来た方々に登山を満喫してほしい。それも命あっての話。くれぐれも「安全優先の登山を」と願う。

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