2024年9月26日付

2024/09/26 08:00
八面観

大の温泉好きだが、猛暑の夏はさすがに足を運ぶ気になれなかった。「秋分の日」を過ぎたら朝晩は肌寒さを覚えるほど。温泉通いの楽しみが生活に加わると思うとうれしくなる。心も体も癒やされる▼小紙1面コラム「ゆるり温泉」を読んでいると、温泉大国を実感する。先日は上諏訪温泉が登場し、「千人風呂」で知られるレトロな建物の片倉館が紹介されていた。作家の田山花袋は「上諏訪でも下諏訪でも、ある町の地区は、何処を掘っても湯が出て、八百屋でも肴屋でも自由にそれを使用した」(「温泉めぐり」岩波文庫)と書き、湯量の多さを諏訪の温泉の特色に挙げている▼その恩恵は新聞社も受けていた。長野日報社に入社して驚き、感激したのが本社(諏訪市)内の風呂。しかも、憧れていた温泉だった。深い浴槽が一つ。41年前の社屋建設当時からあり、社員は誰でも利用できた▼先輩によると、新聞の印刷で輪転機を扱う社員向けに用意されたらしい。汗とインキで汚れた体をきれいさっぱり。夜遅くまで働いていた新聞記者も入った。熱い湯に漬かりながらさまざまなアイデアが浮かんだに違いない▼諏訪市は家庭にも給湯している。全国でも数少なく、ホースを巡らせて暖房に利用する家庭もある。でも、時代の流れか、利用者は減っているようだ。弊社の温泉も、施設の老朽化に伴う維持費の増加を踏まえて今月、歴史に幕を閉じた。

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