2024年5月16日付

2024/05/16 06:00
八面観

「どっちも、自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ」。漫画「ドラえもん」の一こまである。戦国時代に来たのび太君、先祖に代わり功を成そうと戦に参加。「正しい方を助けなくちゃ」とドラえもんに訴えると、冒頭の答えが返ってきた▼考えさせられるせりふだ。先の大戦はもとより、泥沼化するシリア内戦にパレスチナ問題、ロシアによるウクライナ侵攻…。宗教や民族の違い、防衛に報復、政権批判など理由はあろう。共通するのは「正義はわれにあり」という旗印。だから、終わりが見えない▼何も国や地域の対立に限った話ではない。双方が大義を主張するのは争い事の本質だ。子どものけんかだってそう。「意地悪されたからたたいた」とA君。「先にたたかれたからやり返した」とB君。正当性はどちらにあるのか。もしかして、どちらにもないのか▼20年ほど前の営業職時代、得意先の重鎮だった当時80代の男性が戦地での体験を語ってくれた。日本の正義を信じて銃を握った男性。南方での戦いを「地獄だった」と振り返り、確信したという。「正しい戦争なんてない」と▼そして、こう続けた。「戦争だけは二度とごめんだよ」-。日本はこの先もずっと戦後であり続けられるだろうか。今が新たな”戦前”であってはならない。きょうは「平和に共存する国際デー」。すでに鬼籍に入られた男性の言葉をかみしめたい。

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