桜は気温の変化に敏感だ。一気に開花が進んだり、足踏みしたり。「自然の温度計」の例えもある。昨春は「地球沸騰化」を思わせる過去最速で進んだ。それだけに今年のペースはほっとする▼昔も今も人を魅了する。1912(明治45)年の「南信日日新聞」(「長野日報」の前身)4月18日付の記事は、高島公園(諏訪市)の桜は「早や四分通り咲いた」と伝える。花はほころび始めがいい、と早くも多くの人が訪れ、茶屋では田楽や煮しめの調達、熱かん用のとっくりの持ち運びに追われ、あちこちで飲めや歌えの宴が見られたようだ▼〈幹焦げし桜木の下 つぎつぎに 友のむくろをならべゆきたり〉。歌人の岡野弘彦さんは悲惨な体験を通し、桜が美しいと一生思うまい、と決心したという。45(昭和20)年4月13日夜の東京大空襲。21歳で「炎の桜」を見た。「堤防の桜が花ごと炎になって燃え上がった。その心にものすごい花だという感じが深まってきた」と講演で語っていた▼葉が出るより先に花が一斉に咲く美しさ、咲いたかと思うと春風にぱっと散ってしまう。そんな姿に人の命を重ねることもある。「散る」という言葉は死を連想させ、特攻隊員の辞世の句としても引用された▼当たり前に思っていた日常が一変したコロナ禍。ようやく心おきなく花見を楽しめる春がやってきた。決して当たり前ではない平和の尊さを改めてかみしめる。
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