昔は「一年にわらじ百足穿く人は、食いっぱぐれがない」と言ったそうだ。宮田村出身の民俗学者でわらじの研究で知られた向山雅重さんが、1972年10月に伊那市天狗平の古老から聞いた話として「続山ぶどう」に記している▼古老はこう語ったという。百足のわらじを穿く人は、よく働く人、稼ぐ人である。百足というと3日に1足になるが、山仕事だと3日は持たない。畑仕事なら3日は大丈夫。わらじは作って穿くの繰り返しだから、百足穿く人は「やはり、働き者ということになるなえ」▼明治に革靴が渡来し、大正以降にゴム底の地下足袋が普及した。日本人の服装は洋服となり、わらじやげた、草履は忘れられていく。一方で、半世紀前の伊那谷には、わらじを語る人がいた。今なら祭りで使うくらいだろうか。生活様式の劇的な変化に驚くばかりである▼山に囲まれた信州では木を切り、米を作ることが生業だった。峠を越えて米を売り、蚕を育てて収入を得る。農閑期は春に備えてわらじを作り、出稼ぎもした。働くことはそのまま生きることに直結していた。「働き者の信州人」と言われるゆえんだろう▼向山さんは「一見、つまらないことに見えるものの中に、実に重要なものが多くあるものです」と語っている。分かりたいという情熱をもって、見極めようと立ち向かう。働くことの意味や喜びは、そこにあるような気がする。
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