「アメリカは日本を守らねばならないが、日本は我々を守る必要がない」「日本はコメに７００％の関税を課している」―。事実誤認か、はたまた何かを意図するはったりか。大統領をはじめ、米国トランプ政府による極端な発言が相次いでいる▼グリーンランドを所有したい、カナダを５１番目の米州に―。日本以外の国にも挑発的な発言を繰り返す。対中戦略の一環との見方もあるようだが、ウクライナ大統領を「独裁者」とも言い放つ。翻って自身への批判には　「敬意を」　「フェイクニュース」　「魔女狩りだ」　とはぐらかす▼国内でも、未確認の情報をまき散らし、強い言葉で他者を攻撃し、追い詰める行為が増えている。真実か否かよりも、陥れることが目的のように。ＳＮＳ普及の弊害か。「言った者勝ち」の風潮がのさばり、対立は暴力も誘う。殺伐とした空気が広がりつつあるようで、気にかかる▼日本国憲法は表現の自由を保障する一方、「公共の福祉に反しない限り」と制限している。少なくとも社会的責任を負う人の言動には、根拠の明示や説明責任が求められる。そんな自分の中の常識が、にわかに崩れていくような怖さを感じる▼トランプ氏の登場で情報の正確性や妥当性を検証するファクトチェックが注目されるようになった。新聞をはじめメディアの重要な役割でもある。断片的な情報に振り回されず、真実を見極める目を養いたい。