「失礼します」。緊張した面持ちで部屋に入るスーツ姿の３人の中年男性。面接会場のようだ。パーカ姿の若者がおもむろに話し始める。「じゃー皆さんの会社に入るメリットを教えてください」▼映画「カメラを止めるな！」で知られる上田慎一郎監督のショートフィルム「逆面接」である。面接を受けているのは実は採用担当者の方。なんとか若者に選ばれようと、定時で退社、有給休暇は好きなだけ、在宅勤務も可能－とアピール合戦を繰り広げる▼令和ＸＸ年、少子高齢化の加速で就活生が会社を選ぶ時代になったという設定。昨年の今頃、ネット上で話題になったが、生産年齢人口は減少が続き、この作品ほど極端ではないものの、それに近い風潮を感じる昨今▼来春卒業予定の大学生らを対象にした会社説明会が１日に解禁された。人手不足を背景に学生優位の「売り手市場」が続き、報道によれば内定率は既に４割とも５割とも。企業の中には競うように初任給を引き上げる動きも伝えられる▼「逆面接」の３人目の採用担当。前の２人とは打って変わり「メリットはやりがいだ」と熱弁を振るうが、若者は「選ばれる立場っすよ」と突き放し、別の男性の会社へ。作り話ではあるものの、若者に選ばれなければ人材確保、人手不足の解消は難しいのも現実。どう自社の魅力をアピールしていくか。企業にとっては厳しい時代が来ているようだ。