2025年1月24日付

2025/01/24 08:00
八面観

小学生の時、重度障がいを持つ女性を初めて見た。女性は民家の小窓からいつも外を眺めていた。僕たちは手入れが行き届いた庭先で振り返り、女性の顔に驚いたふりをして走り去るのが行動パターンだった▼ある日、女性の父親が玄関から走り出してきて、筆者と友達の手首をつかみ、強い力で家の中に引き入れた。娘に対する残酷な振る舞いを責めるでもなく、謝罪を強要するわけでもない。日当たりのよい縁側に無言で案内し、女性の目の前に座るよう促した▼女性は思いのほか若く、少女の面影を残していた。ずっと遠くを見ている。表情も手足も動かないが、肌は透き通るほど白く美しかった。友達が泣いている。筆者の目にも涙があふれてきた。その日を境に、僕たちは父親とあいさつを交わすようになり、女性を見ると心が温かくなった▼先日、ダウン症を持つ小林宏夢さん(20)に出会った。会話が困難だった小学生の時に先生の勧めで詩を書き始めた。作品がポストカードになり、2月1日から南箕輪村の障がい者生きがいセンター「ひまわりの家」で販売されるという。小林さんの素直で優しい心と向き合いながら、40年前、目をそらさないでほしいとつぶやいた女性の父親を思い出していた▼人と違うこと、何かができないことにとらわれず、命の輝きと心の声を感じ取れるか。障がいを目にする自分にいつも言い聞かせる。

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