2025年1月18日付

2025/01/18 07:59
八面観

物理学者で随筆家の寺田寅彦が著作「天災と国防」(1934年)の中に記した戒めを一部抜粋してみる。「悪い年回りはいつか回ってくるのが自然の鉄則、いい年回りの間に十分の用意をしておかなければならない」▼平時の備えこそ重要だと説く。そしてこう続ける。「実に明白なことであるが、またこれほど万人がきれいに忘れがちなこともまれである」。寺田の死後、門下生であった中谷宇吉郎によって広められた〈天災は忘れた頃にやってくる〉の典拠とされる一文である▼阪神大震災から30年が経過した。昨日はニュース番組で多くの特集が組まれた。肉親や友人を失った方々を思えば節目と呼ぶのもはばかられるが、記憶を風化させないために意義のある1日だったのではないか。もっとも、近年は天災を忘れる間もないのだけれど▼この30年間、日本はさまざまな災害に見舞われた。東日本大震災は言わずもがな、列島各地で震度7規模の地震が発生。1年前の能登半島地震は記憶に新しい。13日には気象庁が「南海トラフ地震臨時情報」を発表。3連休最後の夜に不安を覚えた方も多いのでは▼地震だけではない。台風や噴火、異常気象…。昨年9月には、震災の復興が滞る奥能登を豪雨災害が襲った。行政の対応は追いついていないのが現状だ。有事に公助が間に合わないなら、自助共助がどれほど大切か。昨日はそんな思いも新たにした。

続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。

日付で探す

<前次>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031