夜の下諏訪宿本陣岩波家で密教系芸術集団「混沌の首」のパフォーマンスを体感する参加者

東洋思想と現代アート 下諏訪町で催し

2024/07/15 06:00
文化

見えないものの力をアートや講話を通して学ぶ催し「諏訪とアートと東洋思想」が13日夜、下諏訪町の下諏訪宿本陣岩波家で開かれた。町内外から17人が参加。理性の外に広がる無意識の考察から自己存在を探究した東洋思想と、日常から離れて世界へ直接つながろうとする現代アートを手掛かりに、現代文明の在り方を問う一歩を踏み出した。

 

美術展示やイベント企画を行う現代美術家らでつくる団体「アートコア」の共同代表を務める石川雷太さん、羅入(ラジュ)さん。コンセプチュアルアーティストの世界的先駆者、松澤宥(ゆたか)(1922~2006年)の出身地である同町を訪れた際、自然と神仏が融合する諏訪の磁場に引かれたのがきっかけで、岩波家と共同で初めて企画した。

 

夕闇迫る庭園を背に、日印文化交流ネットワーク事務局長の堀内伸二さん=同町高木=が東洋哲学を講義。日本を中心とする哲学者や言語学者の諸説を参照しながら、功利主義にあらがい、感覚や心の分析から自己をあらわにしよとした伝統を解説した。

 

続いて石川さんは、アートを「見えないものを見えるようにする」行為と規定。観客に考えることを求めるコンセプチュアル・アート、無意識の表現を企てたシュールレアリスムなどの現代アートの歴史を紹介した。

 

その上で、アート作品は世界を感応する「窓」であるとする自らの考えを展開。「場所」と「作品」に私たちの感性という、三つの力を統合した「新しいアートが未来の文化をつくる。諏訪の地から始めていきたい」と語った。

 

最後は、石川さんと羅入さんが参加する密教系芸術集団「混沌の首」が、池や風の音が響く開放された室内でアートパフォーマンスを披露。会場そのものを一つの作品に昇華し、いまだ自覚されない新しい感覚と思考へといざなった。

 

9月28日には「諏訪とアートと民俗学」と題した第2弾を開催。来年度は、真・善・美といった社会の質を規定する価値を考える文化についてのフェスを計画している。

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