幕末から明治にかけて伊那谷を漂泊した俳人、井上井月(1822~87年)の句が、伊那市東春近の光久寺で新たに見つかった。井月を顕彰する活動に取り組む井上井月顕彰会が30日に確認した。扇面(扇の地紙)に書かれた真筆で、「友はぐれしてとりためつ名なし茸」としたためられている。同会は「軽やかな滑稽味のある句で、井月の幅広い作風が感じられる」と指摘している。
鑑定した同会監事の一ノ瀬武志さん(52)=辰野町=によると、「キノコ狩りで友とはぐれてしまい、名前も分からないキノコを取りためてしまったよ」という「ちょっとおかしみのある句」。署名(サイン)や印鑑の特徴から明治3~5年ごろの作品とみられるという。
掛け軸などを集めるのが好きな同寺の前住職、小林元秀さん(81)が個人的に所有していたもので、扇から取り外され、掛け軸に仕立てられている。もともと寺にあったものではなく、いつ、どこで手に入れたかは不明という。井月について取り上げた新聞記事を見て掛け軸のことを思い出し、21日に同会理事の宮澤宏治さん(62)=駒ケ根市=を訪ねた。
一ノ瀬さんは宮澤さんから送られた写真データを基に「これまでに発見されていない井月句とみて間違いない」とした。筆跡も井月の真筆集と見比べた結果、「よく特徴が出ている。新しい句なので偽物は考えにくい」として真筆と判定した。
小林さんは井月が同寺の鐘を詠んだ「光久寺晩鐘」という句を残していることもあり「改めて親しみを感じる」と喜んだ。宮澤さんは「埋もれていた句に光が当たり、うれしい。こうしたことがつながって井月への関心が高まれば」と話していた。
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