伊那谷に伝わる民謡「伊那節」を後世に継承しようと、伊那市は17日、小学生を対象にした初の指導講習会を同市西箕輪小学校で開いた。同校3年生73人が参加し、伊那節振興協会のメンバーから踊りの所作を学び、権兵衛峠を越えて伊那から木曽に米を運んだ歴史や、人々の暮らしを支えた養蚕などをうたった歌詞を通して郷土の文化に理解を深めた。
伊那節は、江戸時代に伊那と木曽を行き交った人々の馬子唄として広がったとされ、古くは「おんたけ」「おんたけ山」とも呼ばれた。祝い歌として誰もが歌い踊れる時代があり、会合や宴会がたけなわになるとみんなで踊り、喜びを分かち合ったという。
講習会は文化の継承を願う振興協会の声を受け、市が新規事業として企画した。西箕輪小の3年生は、地元にある権兵衛峠の歴史を調べる中で伊那節を知り、受講を希望。市内の小学生として初めて伊那節の習得に挑戦した。
民謡サークルや祭り芸能集団「田楽座」など7団体で構成する伊那節振興協会のメンバー11人が訪れ、三味線と尺八、太鼓の生演奏や歌声を披露したほか、日本舞踊花柳流師範の秋山勝子さん(86)らが「山をなぞるように手を下ろして」「天竜川の流れを表現します」などと十個からなる伊那節の踊りを指導した。
児童たちは輪になって踊り、指先の動きや足の運び方を繰り返し練習した。最初はぎこちなかったが、次第に全員の動きがそろい始めると、「生演奏と生歌」の臨場感に包まれながら、踊りを楽しんでいるようだった。受講した児童は「ちゃんと習ったのは初めてだけど、楽しかった。伊那まつりで踊りたい」と話していた。
秋山さんは「伊那の民謡を覚えて大人になったら年1回は踊ってほしい」、振興協会の御子柴春樹事務局長(77)は「こういう機会を願っていた。伊那節は伊那谷共通の文化。みんなで踊り、歌えるようになることを期待しています」と目を細めていた。
次回の講習会は7月、伊那小6年生を対象に行う。来年1月には市内保育園9園で踊り観賞会を開くという。
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