2025年1月4日付

2025/01/04 08:00
八面観

人生で一番うれしかったことは何ですか。100年も生きてきた人たちは、どう答えるのだろう。最も多かったのは「戦争が終わったこと」。まさに激動の時代を生き抜いてきた人たちならでは▼お元気な長寿者を紹介するテレビ番組のワンシーンに過ぎないけれど印象に残った。多感な時期に戦争があり、軍国少年・少女を強いられた。戦場で仲間を失ったり、空襲で家族を失ったり、食べる物がなかったりと筆舌に尽くしがたいつらい体験をした。終戦の安堵感やうれしさは、敗戦の悔しさに勝る共通の記憶ではないだろうか▼今年は戦後80年、昭和100年の節目を迎える。昭和という時代は、戦争抜きに語れない。その戦争体験者は減る一方だ。信州での平和学習の拠点ともなっている満蒙開拓平和記念館(下伊那郡阿智村)では、体験者による「語り部定期講演」が、体験者の減少と高齢化に伴い終了した。直接の継承はますます難しくなるばかりと痛感する▼以前訪れた広島平和記念資料館で被爆者に代わって体験を伝える「被爆体験伝承者」の活動に触れた。体験や平和への強い思いをくみ取った上での語りは胸に迫るものがあった。さまざまな継承方法がある。肝心なのは、そうした声をどれだけ拾い上げ、伝えていけるかだろう▼「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」。ドイツのワイツゼッカー元大統領の言葉を年頭にかみしめる。

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