2024年11月16日付

2024/11/16 07:59
八面観

厳しい残暑が続いていた9月下旬、諏訪市内の和菓子店を訪れると、赤や黄、だいだいの葉を広げるカエデの飾り物が置かれ、秋たけなわの装いに包まれていた▼季節を先取りするのが和菓子の世界だが、これほど待つとは思っていなかっただろう。紅葉である。多くの名所は例年より1週間遅れて盛りを迎えた。この「例年」とは過去10年の平均と比較してという所が大半であろう。昭和50年代頃までと比べると半月近く遅くなっているのではなかろうか▼県の研究機関の生物季節に関する調査でも変化が明らかになっている。飯田では紅葉日が平年より20日遅れる年が出始めた。桜の開花も早まるが、紅葉の遅れはより顕著。最低気温5度前後が続けば色づき始めるとされるが、残暑が長引いてなかなか到達しない▼狩猟解禁日にこんなに落葉が少ない年はあっただろうか。きのうは記憶をたどりながら山里や猟場を回り、茅野市の「多留姫の滝」に足を運んだ。句碑が並ぶ散策路に葉は敷かれ始めていたものの、一帯の紅葉の見頃は続いていた▼季節を詠む俳人。同市の原天明さんは生前、小平雪人が好んだ紅葉名所を訪れ「色が悪い年が増えた」と残念がった。盆過ぎには暑さが和らぎ、10月後半には盛りを迎えていたであろうこの地の紅葉。雪人が詠んだ鮮やかな色合いを想像する。なかなか色づけなかった今秋。木々が鳴らす警鐘は鮮明に聴こえた。

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