伊那市高遠町の商店街「ご城下通り」に林立していた30本余りの電柱と電線がなくなり、広い空とそぞろ歩きが楽しめる城下町の景観がお目見えした。県伊那建設事務所が2016年度から進めていた国道361号無電柱化推進計画事業で、8年間に及んだ事業が6月末で全て完了。地元では、城下町の街並みをアピールし、活性化につなげようとする機運が広がりつつある。
国道361号は岐阜県高山市と伊那市高遠を結ぶ主要幹線道路で、災害時の緊急輸送路にも指定されている。高遠町の中心市街地を通り、年間約20万人が訪れる桜の名所「高遠城址公園」から沿線に商店街が形成され、衣料品や靴、まんじゅう、そば、日本酒、金物、不動産、金融、タクシーなどを扱う約25の商店が軒を連ねる。
無電柱化工事は総事業費約7億円を投じ、国道152号交差点近くの高砂橋からJRバス高遠駅付近までの500メートル区間で行った。電力や通信の電線を道路下に埋設する電線共同溝整備を進め、昨年6月までに電柱の撤去が終わった。今年度は桜の繁忙期を避け、歩道のカラー舗装や視覚障がい者用誘導シートの設置を行い、事業を完成させた。
商店街から伊那市街地へ向かう三峰川右岸の国道361号では17年1月、山側法面の岩盤崩落が発生。1カ月半にわたって全面通行止めになった。県は総事業費約7億3000万円を費やして落石・岩盤崩落対策工事も行い、昨年3月に完了している。
高遠、長谷、西春近の商工業者でつくる伊那市商工会商業部長の伊東洋明さん(55)は「電線や電柱がなくなり、城下町の雰囲気が出てきた。天気の良い日は青空が街並みを引き立ててくれる。車椅子や高齢者でも歩きやすく、防災面でも安心が高まった」とし、「5年に及ぶ工事が終わった。城下町風の街並みをアピールし、活性化につなげたい」と意気込みを語る。
夏の三連休初日の13日、甲斐(東)駒ケ岳登山で商店街を初めて訪れた会社員の岡本奈々佳さん(24)=大分市=は「電柱がないのは視界がすっきりするし、きれいで歩きやすいですね。古い街並みを大切に保存されていると感じます」と話していた。
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