御柱木でつくった眺望デッキ

御柱材で眺望デッキなど設置 採石場跡地整備

2024/07/12 06:00
社会

諏訪市四賀の採石場跡地・幕岩を整備し、名所づくりを目指す東山地域里山活性化プロジェクト(伊藤為幸代表)は、現地に手作りの眺望デッキと休憩場所、掲示板を設けた。デッキに用いた木材は、2016年の諏訪大社上社御柱祭で四賀地区が豊田とともに曳(ひ)き建てを担当した「本宮一之柱」。役目を終えたご神木が、熱い祭りの思い出とともに市民を和ませるスペースとして生まれ変わった。切り立つ断崖の中腹に旧字で刻まれた「幕岩」の文字を見つける新たな発見もあり、正式に「幕岩公園」と命名した。

 

 

■休憩場所整備は終盤の一大事業

 

桑原城址を見下ろす山腹にあって昭和30年代ごろまで鉄平石の採掘が行われていた。近年はやぶと化して荒廃していたが、同団体が3年前から人海で手を入れ、高さ30メートル超、幅数百メートルに及ぶ断崖のパノラマと、諏訪盆地を望む眺望が開けた。

 

デッキと休憩場所、掲示板の製作は整備計画終盤の一大事業で、「一之柱」の払い下げを受けた地元の有賀建設(有賀稔社長)が、自社も携わるこの活動を応援しようと寄付した。主な製作は同団体のサブリーダーで大工の伊藤金一さん(68)が匠(たくみ)の腕を振るった。

 

■真正面の本宮も見どころの一つ

 

四賀地区は当時の御柱祭で96年ぶりに本宮一を担当する大役を果たした。くしくも伊藤さんは建て御柱で「てっぺん男」を務めた。人一倍思い入れの深い御柱を自ら加工、再生できることを大いに喜び、「自分が使うつもりで心地よさに気を使いながら製材、設計、組み立てをした」(伊藤さん)。とはいえ幅80センチ、長さ4メートルもある材は大きすぎて扱いに苦労し、「時間をかけてねじれを取ったり、削り直したりして結構手がかかった。大切な木なので端材を出さないように余すことなく使った」という。

 

現地に設置したところ、偶然にも国道から上社への参道が足元から延び、真正面に本宮があった。「御柱が社を見守る新たな役目を得て、眺望の見どころがもう一つ増えた」(伊藤代表)とメンバー皆で喜び、有賀社長も「ご神木にふさわしい使いどころで生かされて良かった」と話している。

 

休憩場所と掲示板は園内に入って最初の見どころ、滝の前に置き、掲示板には来訪者に足跡を残してもらうノートも備え付けて交流を心待ちにしている。

メンバーが見つけた、採石 痕に刻んだ「幕岩」の文字

■断崖に刻まれた名称の由来発見

 

同所はこれまで長らく、広い採石痕を緞(どん)帳に見立ててか、地元民の間で「幕岩」との地名で呼ばれてきたが、作業中のメンバーによる文字の発見で名称の由来が確かになり、産業遺産の色も濃くなった。今夏中に、その名を刻んだ鉄平石の看板を立てて、10月には整備の完成を祝う計画だ。

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