合資会社親湯温泉(栁澤幸輝社長)は17日、茅野市郊外の蓼科で同社が経営し、日本映画界の巨匠、小津安二郎監督(1903~63年)が宿泊したことでも知られる「創業大正十五年蓼科親湯温泉」の本館清流亭304号室を「夕映の間 with Memories of Ozu」としてリニューアルオープンしたと発表した。かつて小津監督が愛した、美しい夕暮れが堪能できる客室を旅館の渓谷側に再現。名作の数々に思いをはせながら家族の団らんを楽しめる空間を提供する。小津監督の映画作品は海外、特にフランスでの評価が高いといい、インバウンド需要も期待される。
2016~25年に実施する「100周年カウントダウンプロジェクト」の一環。同旅館の代名詞でもある「3万冊の蔵書ラウンジ」で創出する”文学の世界”に加え、新たに”映画の世界”を取り入れて、「知的な寛(くつろ)ぎ空間」の提供を図る。栁澤社長(49)によると、ターゲットは「家族3世代」。親子の関係性や心の距離感を巧みに描いた小津監督の映画作品を受け、家族での滞在を推奨する客室とした。
構想から完成までに約10年を要したというこだわりの客室は改装に当たり、同旅館の元スタッフで、小津安二郎記念館「無藝荘」の初代火代番も務めた栁澤徳一さん(92)=同市湯川=に聞き取り調査を実施。当時の間取りを再現するだけでなく、小津作品で表現される家屋の雰囲気も付与させた。小津監督が生前愛用した品々を親戚から譲り受け、調度品として活用しているほか、灰皿やショットグラス、花瓶などは客間入り口近くに展示する。
栁澤社長は「蓼科が持つ映画の”文脈”を途絶えさせることなく後世に伝えていきたい」と語り、小津監督作品を愛する「シネフィル」の人たちに利用を呼び掛けている。料金は1泊2食付きで1人当たり2万3000円~(税別・平日2名1室利用時)。宿泊の申し込み、問い合わせは蓼科親湯温泉(電話0266・67・2020)へ。
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