能登半島地震の発生から半年がたった。しかし、3日朝も震度5強の大きな揺れが現地を襲い、予断を許さない状況は続いている。内閣府の発表によると生活、経済活動の根幹となる上水道さえ石川県内では輪島市で1割、珠洲市では3割近くの世帯で今も復旧していない。ライフラインの回復作業が長期化する現状は、この地域でも災害への備えをいま一度、見直す必要を浮き彫りにした。水道週間(1~7日)にあたり、能登の被災地で水道復旧の支援を行った諏訪市水道温泉事業協合(濵隆幸理事長)に教訓を聞いた。
同組合は今年2月、市の要請を受けて七尾市内で5日間、集落の中を通る上水道の本管を修復する作業に従事した。参加したのは4事業者の30代~60代の5人。諏訪地方からの派遣は唯一で、同組合としても初の被災地支援活動だった。地下を掘って水道管をたどり、漏水箇所を見つけては管を取り換え、つなぐ地道な作業を朝から日没直前まで繰り返した。
隊長を務めた副理事長の渋崎建設常務、守矢清さん(64)は「倒れ、崩れた家並みの中で『果たして再び住めるようになるのか』と案じながら作業をした。住民は皆避難して人っ子一人おらず、一層気持ちが滅入った」と当時を振り返る。
「修復したといっても本管が回復したまで。家々への引き込み管は各自で直さなければならないが、地元業者も被災しており、そこまで作業の手が回らない」と現状を示し、「たとえ上水道が通っても下水道が復旧しなければ水を流すことができず、本当に暮らしを取り戻したとは言えない」と厳しさを指摘する。
現地の海辺に近い地域で見られた液状化現象は、諏訪湖に面した諏訪地方でも発生が予想される。「マンホールが地表から50センチ以上もせり上がっていた。そこに接続する水道管は当然、断絶している」状況を目の当たりにし、「諏訪が同様の地震に見舞われれば、かつて諏訪湖だったエリアはほぼ壊滅するだろう」と被害の深刻さが実感できたという。
守矢さんは「被災地のあらゆる復旧作業は道路が回復した以後になる。液状化で道路が破壊されたら、ライフラインの復活は相当遅れると想定した方がいい」と警鐘を鳴らし、「真っ先に必要になるのはトイレ。給水支援も車両が入れるようになるまでは難しい。被害の長期化を見込んで各自で備品の量を増やすなど強化を」と提言する。
また、被災後の生活の立て直し、少しでも復旧を早めるために「隣近所と支え合ったり、なじみの業者に作業を頼んだりできるよう日ごろからの付き合いがとても大事」とも感じたという。老朽した水道管を、耐震性が高い管へ更新する作業も急ぐべき―とする。
組合理事長の濵さんは、今回の支援活動を通して「被災地では支援する側も心身ともに厳しい状況に置かれるので体制づくりの必要を痛感した」とし、「諏訪でひとたび災害が起きたら水道業者の作業は多忙を極めるが、業界は職人が減り、人手不足にある。市民のライフラインを守れるように組合、企業の存続に力を尽くしたい」と話している。
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