駒ケ根市駒ケ根高原の光前寺周辺で、野生のニホンザルの出没が相次いでいる。10年ほど前から頻繁に現れるようになったが、「今年は特にひどい」(地元関係者)。人的被害こそ確認されていないものの、不用意に近づくと激しく威嚇してくることも。夏の観光シーズンを前に、住民や観光業者からは「何かのきっかけで人に危害を加えかねない」と懸念する声も上がっている。
■人間より堂々やりたい放題
大型連休が終わった5月中旬の光前寺。雨上がりの午後、仁王門前の道路を10匹ほどのサルの群れが悠然と横断していく。すぐ近くに人間がいてもまるで気にしない様子だ。群れは脇道に入り、やがて草むらへ消えた。「人間より堂々としている。ここで一番偉いのはサルだね」。歩道の草むしりをしながら一部始終を見ていた近所の女性が苦笑混じりにつぶやいた。
その数十分後。光前寺の竹やぶから何匹かのサルが顔を出し、タケノコの皮を口にくわえて道路を横切った。有刺鉄線を巻いてある雨どいも難なく登って建物の2階に移動し、ベランダからベランダへ。道端に座り込み夢中で草を食べる1匹に近寄ると、親とみられる別の1匹が走り寄り「シャーッ」と威嚇してきた。
同寺の吉澤道人住職(76)と道信副住職(46)によると、今年は頻繁に出没し、特に桜が開花した頃からほぼ毎日現れている。寺でも花を食べられたり枝を折られたりしたほか、庫裏の天井裏に入って暴れたり、仏前の花を縁側まで持ち出して散らかしたりとやりたい放題。爆竹で追い払おうとしたが、あまり効果はなく、サルが現れると、境内に放送を流して参拝者に注意を促しているという。
■有効な対策を協議する場を
県が策定した第二種特定鳥獣管理計画(第5期ニホンザル管理)によると、群れの加害レベル5段階のうち駒ケ根市は「3」と判定され、群れのサイズを30頭程度まで縮小させる「部分捕獲」の方針が示されている。組織的な追い払いや電気柵の設置なども実施するとされている。
光前寺の向かいにある旅館「和みの湯宿 なかやま」を経営する中山茂房さん(59)は「人なれしたサルは賢く、人間の”本気度”を見て行動している」と指摘。「餌付けなどでさらに人なれが進めば、人間に危害を加えるサルが出かねない。そうなれば観光地にとって大きな痛手だ」と危機感を募らせる。
市農林課によると、サルについての調査は行っておらず、実態ははっきりしない。同寺の吉澤住職は「個々で対処していくのは無理だろう。観光、農業、行政など関係する全ての人々が有効な対策を協議する場を設けられないか」と話す。
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