駒ケ根市立博物館で95歳記念刻字展を開いている元市教育長の髙坂保さん

言葉の意味「刻字」で表現 髙坂さん95歳記念展

2024/05/22 06:00
文化

元駒ケ根市教育長で刻字愛好家の髙坂保さん(95)=同市小町屋=の刻字作品を集めた「髙坂保(秀峰)95歳記念刻字展」が21日、同市上穂栄町の市立博物館で始まった。80歳(傘寿)と88歳(米寿)の記念展に続く3回目の個展。髙坂さんが教員時代に学級担任を務めた同市赤穂中学校の教え子たちが実行委員会をつくり、開催を後押しした。文字や言葉の持つ意味を立体的に表現した刻字作品約80点を展示している。31日まで。

 

髙坂さんは1950年から県内各地の中学校で教員を務め、赤穂小校長を最後に39年間の教職を退職。99年まで市教育長を務めた。

 

刻字と出会ったのは40代後半の教員時代。自らの書を木板に刻み着色して仕上げる立体的な表現に魅せられた。同じ学校の教員仲間から手ほどきを受けた後、独学で技術を磨き、趣味として楽しみながら「秀峰」(しゅうほう)の雅号で50年にわたり作品を作り出してきた。

 

会場には文字を彫り込む「陰刻」と文字の周りを彫る「陽刻」の作品を展示する。「和顔愛語」「一期一会」「初心不忘」「無我」「温故知新」―。主に禅語や漢詩などから生き方の指針となる文字や言葉を選んでいるが、自作のものも。書体や彩色は言葉の持つ意味を考えて決めるという。彫り込む木板の節や木目を生かした作品もある。「書く・彫る・彩る」という複数の工程を経るため手間はかかるが、「言葉選びで頭を使い、彫刻や彩色で細かく指先を動かす。95歳まで元気でやってこれたのも刻字を続けてきたためかもしれない」と髙坂さん。

 

コロナ禍で毎年のように開かれていた同級会が中止となり、教え子に贈ろうと少しずつ作ってきたA4サイズの作品がたまってきたことも3回目の個展を開くきっかけになった。実行委員長の小町谷悦男さん(70)は「我々にとっては人気の先生。95歳になっても頑張っている姿を見て自然に応援しようと集まった」と話す。髙坂さんは教え子たちの支援に「教師冥利(みょうり)に尽きる」と感激。作品について「気軽に見てもらい、刻字という表現に興味を持ってもらえたら」と話している。

 

会場には抽せんで髙坂さん制作の小品約40点が当たる特設コーナーも。また全作品を対象にチャリティーも実施しており、能登半島地震の被災者支援に役立てる。

 

午前9時~午後5時。入館無料。27日休館。

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