諏訪市出身で日本チョウ類保全協会員の小林祐治さん(71)=松本市=が県版レッドリスト(2015年)で絶滅危惧ⅠB類に掲載されているヤマキチョウの生息地の一つ茅野市北山糸萱で保全活動に努めている。地元の糸萱区に協力してもらいながら、幼虫の餌となるクロツバラを保護している。個人的に毎週のように同区に通い、保全活動を重ねてきたが、区との関係構築で今後の見通しが立ち始めたことから賛同者を募って活動の輪を広げることにした。
小林さんは小学校の恩師の影響で昆虫好きになり、チョウの展示会を見学したのがきっかけで特に関心を寄せるようになった。チョウの生息環境の保全活動を行う中で、松本市では松くい虫対策で行われた毒性の強い農薬の空中散布がチョウ類をはじめとした生物や環境に影響を及ぼしているとして、中止を求める活動にも取り組んだ。
長年の保全活動から糸萱区内にチョウの生息に適した場所があることは理解していた。個人的な活動として糸萱区に通っていたところ、地元農家や関係者と親しくなり、草刈りなどを一緒に行うようになった。
ヤマキチョウの雄の羽はレモン色やバターのような色と表現されることが多く、一説にはチョウを表す英語の「バタフライ(バター・フライ)」の語源になったともいわれている。7月下旬ごろ発生し、成虫のまま越冬して翌春から活動を再開し、6月上旬ごろまで生存するという。幼虫の食餌植物はクロツバラのみ。樹木がまばらに生えている草地を好むとされ、国内では長野、岐阜、山梨、静岡県などに分布し、東北地方は絶滅状態という。小林さんは「茅野市は住民と里山が共に生きる暮らしが根付き、農薬の空中散布が行われていないため、ヤマキチョウだけでなく多くのチョウが生息できる環境が残っている」と話す。
今年に入り、クロツバラが生える斜面の近くに保全活動の拠点を置ける土地が借りられる見通しとなったため、関心を持つ人の輪を広げようと考えた。小林さんによると、同区には「蝶道」と呼ばれるチョウが行き交う細長いエリアがあり、県内で見られる約150種のうち50種近くが見られるという。「チョウが生きられる環境を長く守るため、一緒に活動する仲間を募って息の長い保全活動にしていきたい」と話している。
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