伊那署は24日、携帯電話で指示を受けながらATM(現金自動預払機)を操作していた60代男性に声を掛け、詐欺被害を未然に防いだとして、上伊那地域の女性3人に感謝状を贈った。ATMでの携帯電話使用は詐欺の可能性が高く、同署では金融機関や郵便局などに声掛けを依頼しているが、住民の”連係プレー”で防いだケースは異例。署員会議に合わせて贈呈式を行い、駒津一治署長が女性たちの勇気ある行動をたたえた。
感謝状を受けたのは、自動車販売店営業マネジャーの中川京子さん(54)=箕輪町=、会社員の春日麗霞子さん(25)=南箕輪村=、牛乳宅配業の伊藤美佐子さん(55)=同=。3人は2月中旬、箕輪町にある大型店併設のATMコーナーで男性の後ろに並んでいた。
3人に面識はなかったが、大声で3分以上話しながら、ATM操作に苦戦する男性に異常を感じ、視線を交わした。すぐ後ろにいた中川さんが「何かお手伝いしましょうか」と声を掛けると、ATMの画面には県外の地方銀行の名前があり、98万円を振り込む直前だったという。
男性と電話を代わった中川さんが「どちらさまですか」と尋ねると、男の声で「息子です」「新車購入の頭金」と返事があった。男性には息子はおらず、98万円を振り込む認識もなかった。当初は、架空に請求された料金十数万円を支払うために誘い出されていたという。春日さんと伊藤さんはATMと男性の間に立ちはだかった。詐欺に気付いた男性は感謝し、妻と伊那署に連絡をしたという。
贈呈式には中川さんと伊藤さんが出席。中川さんは「あの時に行動して止めていなかったら眠れなかった。後ろの2人がいてくれて勇気が出た」と語り、ATMで携帯電話を使わない環境の整備を願った。駒津署長は「まさに間一髪、3人の方々の人としての優しさと善意の行動を称賛し、深く感謝申し上げます」と話した。
同署は、詐欺未遂とみて捜査している。
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