駒ケ根市は、九州大学発のベンチャー企業でワクチン開発などを手掛ける「KAICO」(福岡市)と連携し、来年度から、蚕を医薬品に活用することで新たな養蚕業を創出するプロジェクトに取り組む。市内で蚕を飼育して生産した繭を提供、同社は繭内のさなぎを経口ワクチンの原材料として活用する計画。市は蚕の飼育規模を拡大することで、地域経済の活性化をはじめ、耕作放棄地や空き家の減少などにつながることを期待。プロジェクトスタートに伴い、両者は26日、地方創生に向けた連携協定を結んだ。
KAICOは、独自の技術で、さなぎを使った口から飲む「経口ワクチン」の開発に取り組んでいる。来年度は、飼育された豚用に開発した、下痢を起こす病気にかかりにくなるワクチンの販売をベトナムで始める計画だ。これに伴い、来年度は50万頭のさなぎが必要になるといい、提供元を探していた。駒ケ根シルクミュージアム館長で、九州大学名誉教授の伴野豊さんが同大学で蚕の研究を行っていた縁などから、駒ケ根市が供給先の第1号に選ばれた。
来年度は同館が、スタッフを中心に5人態勢で飼育に当たる。今年度の3000頭を3万頭に拡大、10年後には10万頭の飼育を目指す。飼育施設には、同市東伊那にある空き市有施設と同館を使用。餌となる桑の確保にも取り組み、当面は約550本を同館の畑など12.5アールで育てる。土地を確保でき次第、作付面積を増やしていく予定だ。養蚕の担い手も募っていく。
同社によると、遺伝子組み換えをした、蚕にとっては天敵のウイルスをさなぎに入れると、必要とするワクチン成分のタンパク質を入手することができる。蚕を使うメリットに、少量多品種開発を同時に行いやすく、量産したい場合にも短期間で実現できることなどを挙げる。人間用のワクチンについては、ノロウイルスワクチンを開発中だ。
26日に協定の調印式が駒ケ根市役所で行われ、伊藤祐三市長と同社の大和建太社長が出席。伊藤市長は「養蚕の新しい可能性を開き、地域産業の柱の一つに育てたい」。大和社長は「蚕で世界を変えていきたい」と述べた。
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