贈られた水谷心さんの鳥瞰図の複製画(左)と紹介パネル

水谷さん旧山上宮坂製糸所の絵 蚕糸博物館に

2024/03/26 06:00
文化

昨年7月に亡くなった諏訪市出身の水彩画家、水谷心さんが旧山上宮坂製糸所(岡谷市加茂町)をモチーフに描いた鳥瞰図の複製画が25日、同市の岡谷蚕糸博物館に贈られた。同製糸所の敷地内に飾られていた原画を拡大した作品。7代目当主の宮坂厚弘さん(52)と母親の秀子さん(77)が「工女の歴史を物語る絵を多くの人に知ってほしい」と寄贈した。

 

原画は1938年の風景をイメージして、写真などを基に2022年7月に制作された。同製糸所は1874年に創業し、岡谷の製糸業全盛期を今に伝える建造物として、2007年に近代化産業遺産に指定されている。

 

贈られた作品は、デジタル技術で精巧に再現した「ピエゾグラフ」で、縦80センチ、横110センチと原画の4倍近い大きさ。現存する繰糸工場棟、事務所、蔵、母屋をはじめ、今は残されていない寄宿舎や講堂、繭蔵、ボイラーの煙突などを描写。ほのぼのとしたタッチと柔らかな色彩で表現されている。

 

水谷さんは生前、宮坂家から写真などの資料を借り受け、1年以上かけて制作した。秀子さんが複製画の寄贈について相談したところ、快諾を得たという。

 

寄贈では、厚弘さん、秀子さんと義理の息子で同製糸所の調査研究を進めてきた東京経済大学教授の田中智晃さん(47)の3人が来館し、建造物の紹介文を添えたパネルとともに届けた。3人は当時の建物から工女を大切にしていた様子を伝え、「産業遺産を守り、どのように次世代に残していくかが課題」と思いも語った。受け取った同館の髙林千幸館長(73)は「岡谷の宝」と感謝を伝えた。

 

同館の収蔵庫には、同製糸所の経営資料などが保管されている。水谷さんは14年から長野日報に毎月1回風景画とコラムの「水谷心の描く信州の四季」を連載し、同作品は紙面でも紹介された。

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