「も~い~くつ寝~ると~お正月~」。新しい年が始まる正月は年代問わずにワクワクする時期。だったはずなのだが、今はさほど特別な時期には思えない。いつからそうなったのだろうか▼お正月は餅を食べてたこを揚げ、実家に帰り、親族が集まって楽しく過ごす。それが正月。昔からそうだったから、全国どこに行ってもそういうものだから正月は楽しいはず。しかし「そうしなければならない」という伝統や風習に縛られすぎるのもどうかと思う▼岩手県奥州市の黒石寺で長年行われてきた蘇民祭。下帯姿の男衆が無病息災や豊作を祈って蘇民袋を奪い合う勇壮な祭りで、日本三大奇祭とされていたが、今年2月の開催を最後に1000年以上続いた歴史に幕を下ろした。関係者の高齢化や担い手不足が要因だと伝え聞く▼伝統に縛られるがゆえに消えていく祭りや風習、文化もある。取材先で「少子化のため地域に子供がいなくなり祭りが開催できない」という話もちらほら聞くようになった。長い年月続いた伝統も、社会構造や生活スタイルの急激な変化によって受け継ぐ人たちが減り、消失の危機に直面している▼「伝統は攻めるからこそ守られる」という言葉がある。時代の変化に柔軟に対応することも伝統を守るためには必要だと思う。若い世代に伝統や文化の魅力を伝え、いかに次世代の継承者を育てるか。今われわれが抱える課題の一つだ。
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