2024年12月23日付

2024/12/23 08:00
八面観

数年先の未来から過去を振り返った時、一つの転換期として2024年を思い出すだろう。民主主義の根幹である選挙戦を勝ち抜くにはショート動画やSNSを駆使していかにバズらせるか。そのテクニックが必要になった最初の年である▼7月の都知事選では当初無名とされながらもIT・AIに精通した候補者が上位に食い込み、10月の衆院選で「103万円の壁」という分かりやすい言葉を繰り返した国民民主党が躍進。11月の兵庫県知事選はその影響が顕著だった▼選挙に必要な要素とされる「三バン」、いわゆる地盤(組織)、看板(知名度)、鞄(資金)の力も相対的に弱まった。有力候補者を見極める尺度の過度な重視は選挙結果を見誤らせるだろう▼ただ、権力を狙う者が自ら発する情報が世間で最も影響力を持つ社会は危うい。ある主義や思想を世間に信じ込ませる宣伝技術の研究の成果はすでに膨大に蓄積され、実社会で巧妙に使われている。分かりやすい言葉を浴び続けて妄信した結果、誰もが望まないはずの戦争に突き進むことを許した。近年は言葉巧みに嘘を信じ込まされ、財産を奪われる犯罪被害が後を絶たない▼12月、戦後マスコミ界を代表する渡辺恒雄さんが世を去った。政治や世論に影響力を与え続けた主筆は急激に影響力を高めるテクノロジーに何を思うか。マスコミ界のドンに端くれの一人としてそう問うてみたかった。

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